&MEDICAL/&メディカルとは

vol.3 アートディレクター / グラフィックデザイナー・安田昂弘さん

クリエイターの健康プロファイル | 2018.06.05

暮らしのなかに、違和感なく入っていく


プロフィール

アートディレクター / グラフィックデザイナー。CEKAI(世界株式会社)所属。多摩美術大学を卒業後、株式会社ドラフトにデザイナーとして入社。その後独立し、視覚表現を軸に多岐にわたるクリエイティブ活動を展開。個人としても、映像制作や音楽イベントでのVJ活動などを行う。昨年末の個展『EMERGE』では、“気配”という曖昧な存在をグラフィックで表現。http://yasudatakahiro.com

仕事に明確な“終わり”がないクリエイティブの世界では、オン・オフの切り替えが曖昧になってしまいがち。そんな暮らしに、<soft stone back>は「自然と入ってきた」という安田昂弘さん。これまで目を背けてきた健康のこと、健康器具に対するデザイナーならではの視点について、うかがいました。

定量的な終わりがない仕事だから、つい健康には目を背けてしまっていた。

実はこれまで健康器具のようなものは使ったことがなくて。体に不調を感じても、なにもしてこなかったんです。特につらいのは、背中と腰。昔ヘルニアをやったことがあって、いまでも長時間立っていると、歩けないくらい腰が痛くなってしまう。長時間のパソコン作業で肩甲骨あたりに痛みを感じながらも、見て見ぬふりをしていました。揉み返しが怖くて、整体にも行きません。以前、長時間座っていても疲れない健康チェアのようなものを買ったことはあるんですが、結局、体に合わなくて使わなくなってしまった。「そろそろ、正しくメンテナンスをしないとな……」と思っていたところだったんです。  健康のために唯一続けているのは、「歩ける距離はすべて歩いて移動する」ということ。通勤も、片道二十分くらいですが必ず歩くようにしていて。だから、靴も基本的にランニングシューズしか履きません。歩行は全身運動ですし、歩くときの脳の揺れ方は“考える”のにもちょうどいいそうです。同時にいくつもの仕事を、ディレクションからデザインまでおこなっていることが多いので、歩いているときには並走している仕事の大きな流れを整理するようにしています。

極論的に言うと、この仕事には“終わり”がありません。定量的に測れない仕事なので、ベストなものをつくろうとするとキリがないから。そうすると、いつも時間を忘れるくらい集中してしまって、いつの間にか「集中が切れながら同じことをずっとやってしまっていた」みたいなことになってしまう(笑)。ちょこちょこと作業していたりが続くので、土日にまとまった休みがあるわけでもない。僕の場合は特に、たとえば「土日には、一切仕事をしない」と決めてしまうと一旦オフにしたあとでオンにするエネルギーが大きくなるので、“極力ずっと入れっぱなし”がいい。一日のなかで、細かくオン・オフが繰り返されていくような感覚でしょうか。だから一方で、「二時間だけ外に出て、友達のギャラリーに行ってみようかな」というのも気分的にはオフなんです。<soft stone back>があると、仕事の合間のちょっとした時間でも休憩ができます。体だけでなく、頭の休憩にもちょうどいいかもしれません。

特殊体型にもフィットする健康器具。

<soft stone back>を使いはじめてから、一ヶ月半ほど経つでしょうか。思い立ったときにいつでも使えるよう、常に事務所に置いています。肩甲骨が開いていく感じだったり、上体が反って背筋がピンと伸びていく感じだったりが、すごく気持ちよくて。本当に体が楽になります。ばたーっと床に寝転がるようにしていると、いつの間にかそのまま眠ってしまったりも(笑)。所属しているほかのクリエイターも気に入っていて、みんなでシェアしているんです。僕は身長が190センチくらいあるので、たとえば椅子ひとつ取ってみても体に合うものがなかなかありません。フレームに骨が当たって痛かったりするんです。当然、マッサージチェアなんかも合わない。だから個人的に「いいな」と感じたのは、<soft stone back>なら自分の当てたいところに当てられるということ。特殊体型でもフィットするというのは、ひとつポイントじゃないでしょうか。

困ったことに、<soft stone back>を使っていると、今度は<soft stone neck>の方も気になってきて……(笑)。<soft stone back>でも、首は伸びて気持ちいいんですが、「あっちは、どんな感じなのかなぁ……」って考えてしまいます(笑)。

UIを上手にデザインすることで、暮らしのなかに入っていきやすくなる。

そもそもコンセプトを聞いたときから、「これは、すごくいいかもしれない」と思っていたんです。というのも、“石”がすごく好きで。なるべくしてなった形や、フォルムも含めた塊感に惹かれて、昔から集める癖があります。たとえばマッサージチェアでも、デザインに工夫を凝らしているものはある。とはいえ普通の椅子とはどうしても見た目上異なるので、“それにしか使えない感”がハードルになってしまいます。その点でも<soft stone back>は優れていて、たとえ事務所に置いていても違和感がないですよね。機能を解体して、「もっとミニマルに、もっと手に入れやすく」と暮らしのなかに入っていくというのは、すごくいいアイデアだと思います。見た目にプラスして、使ったときのギャップもあって、それも本当にいい。

あとは、UI(ユーザーインターフェイス)という視点で気に入っているのが、電源ボタンとコンセント。最初「どこに電源ボタンがあるんだろう……」としばらく探してしまったんですが、ここの刺繍は、もっと目立たないグレー寄りにしてもよかったかもしれません。アイコンとして存在していれば成立するためのデザインだから。

電源コンセントに関しても、プラスチック剥き出しにならないよう配慮されていますよね。暮らしのなかに入っていきにくい健康器具のハードルの高さを、デザインで解消している好例じゃないでしょうか。

ただ“仕事”がうまくなるだけでは成り立たない業界で、確実に、永く残っていくような仕事をしたい。

僕が活動の中心にしているのは主にアートディレクションですが、CEKAIには、ムービー専門の人間だったり、フォトグラファーやプランナーだったりと、幅広いジャンルのクリエイターが所属しています。2017年は、それぞれがいい仕事をできるようになってきた感覚がある。僕自身も、NIKELABのアートディレクションやムービーの制作、年末にオープンしたavexの新社屋の空間ディレクションなどの大きな仕事に携わり、特にそれを実感する一年でした。

*avex

年末には、三回目となる個展も開きました。個展の内容としては、基本グラフィックで、毎年まったく違ったものをやるようにしていて。一年間ずっと考え続けているんですが、それでもまともに形にする時間が取れるのは一ヶ月前くらいから。ただ、毎年「展示前の一ヶ月は仕事を入れない」と強く心に決めても、なんだかんだで仕事してしまいますね……(笑)。

個展を開くたびに改めて感じることがあって、それは、「この業界の仕事は、ただ“仕事”が上手になるだけでは成り立たない」ということ。クライアントが求めるクオリティーを100%で返すために重要なのは、頼まれてもいないことだったり、自分にしかできないことだったりなんです。その領域を自分のなかで明確にしておくという意味では、自分で作品をつくるということがなにより大事で、だからこそ積極的にやっていきたい。30歳で独立したタイミングからはじめたんですが、40歳になるまでは毎年やろうと思っています。

実は、ここ三年間くらいは専門学校で講師の仕事もしているんです。今後は、衣食住・娯楽・教育に関わる仕事をひとつずつやっていたいなと思っていて。この業界だと、どうしても娯楽系が多くなってしまいがちなので、偏らないように幅広く活動していきたいんです。父親が発達障害の研究をしていることもあって、昔から医療系の仕事にも興味があります。なにかグラフィックなりで、自分にできることをしていきたい。わりとこの業界の仕事って、バーンと花火を打ち上げて、「みんな!見てますか!」みたいに突き放す仕事が多いですよね。だから、自分の経験としても、いままで近くで見てきた仕事という意味でも、そうじゃない分野のこともやってみたいという気持ちがあるんです。花火のようにすぐに消えてしまわない、確実に残っていくものや、より長いスパンで使用されていくものっていうのは、クリエイター誰もが憧れる仕事でもあります。

vol.3の安田さんのインタビューいかがでしたでしょうか。この企画は、取材させていただいたクリエイターさんのご紹介で次回の取材先が決まります。 さて、vol.4は、どんなクリエイターさんが登場するのでしょう!ご期待ください。

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